病院や医院(クリニック)では診断のためにエックス線を使います。いわゆるレントゲン写真です。
エックス線は過剰に浴びると人体に影響が出る可能性があるため、エックス線が外部に漏れないように鉛などで特殊な施工(放射線防護)をした部屋(エックス線診療室、レントゲン室)の中でエックス線を使う必要があります。
エックス線室では 6ヶ月に 1度以上の頻度で、エックス線が部屋の外へ漏れていないか検査する「エックス線漏えい線線量測定」(以下、線量測定)の実施が法令で義務付けられています。(法令の「月」は月初から月末を内包するため例えば 4月1日~4月30日に測定した場合、次の測定日は 10月1日~10月31日になります)
人体の代わりに水を入れたアクリウムファントーム(JIS Z4915)にエックス線を照射し、その散乱線の漏れの量をエックス線室の壁の外側で測定します。
測定には電離箱式サーベイメータ(ALOKA ICS-311など)を用います。撮影条件では積算線量(uSv)を、透視条件では線量率(uSv/h)のレンジを用います。
エックス線管球を動かせる場合、または 2管球以上の環境がある場合は、それぞれの照射方向で測定します。一般的なクリニックで 2管球のエックス線テレビ装置の場合は、立位胸部(管球2)、臥位骨盤(管球2)、臥位透視(管球1)の 3回でそれぞれの測点ごとに測定します。
線量測定は実際にエックス線を照射して漏れの量を測定するため、エックス線の照射を行うには医師、歯科医師、診療放射線技師などの資格が必要です。
照射と同時に測点に於いて測定器を確認するため、2人以上での作業になります。
エックス線室が接する全ての面で測定します。また漏えいが起きやすい出入口、透視窓などは重点的に測定します。
壁では床からの高さ 800~1,000mm 程度、透視窓では窓枠と窓の中心などで測定します。
隣接する部屋、上下階、また通常人が立ち入れる外部は測定が必要です。
測定した結果は作業報告書としてまとめます。これは 5年間の保管義務があり、行政機関(保健所など)の立入検査(医療監視)で内容が確認されます。
線量測定は医療機関が自主的に行うものですが、前述のとおり測定を行うために測定用ファントームやサーベイメータが必要なのでこの作業を代行する事業者があります。
お使いのレントゲン装置のメーカに依頼すれば、線量測定の作業を代行してくれます。費用は部屋の規模、メーカで違いますが、1部屋で 50,000~150,000円/回くらいかかります。
愛知県、三重県、岐阜県の場合はこちらをご覧ください。
新規に病院・診療所を開設する際やエックス線装置を新しいものに更新する場合、またエックス線装置を追加する場合には関係機関に届出が必要です。
届出書類の中に「エックス線漏えい線線量測定」結果表を添付する必要があり、書類を作成するために線量測定を行う必要があります。
医療機関が病院(病床数20床以上)、有床診療所(病床数1床以上、20床未満)、無床診療所(病床数1床未満)のいずれかであるか、また開設者が医療法人などの法人か医師個人であるかによって届出書類の様式が変わります。
医療機関が置かれる自治体によって届出先や書類の様式も変わります。
病床数20床以上の医療機関。
病床数1床以上、20床未満の医療機関。
病床数1床未満の医療機関。
第四節 管理者の義務 (放射線障害が発生するおそれのある場所の測定)
第三十条の二十二
病院又は診療所の管理者は、放射線障害の発生するおそれのある場所について、診療を開始する前に一回及び診療を開始した後にあつては一月を超えない期間ごとに一回(第一号に掲げる測定にあつては六月を超えない期間ごとに一回、第二号に掲げる測定にあつては排水し、又は排気する都度(連続して排水し、又は排気する場合は、連続して))放射線の量及び放射性同位元素による汚染の状況を測定し、その結果に関する記録を五年間保存しなければならない。
一 エツクス線装置、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置、診療用放射線照射装置又は放射性同位元素装備診療機器を固定して取り扱う場合であつて、取扱いの方法及びしやへい壁その他しやへい物の位置が一定している場合におけるエツクス線診療室、診療用高エネルギー放射線発生装置使用室、診療用粒子線照射装置使用室、診療用放射線照射装置使用室、放射性同位元素装備診療機器使用室、管理区域の境界、病院又は診療所内の人が居住する区域及び病院又は診療所の敷地の境界における放射線の量の測定